トップ背景

トップ

高齢・介護

医療

障害者福祉

子ども・家庭

知りたい

wamnetアイコン
検索アイコン
知りたいアイコン
ロックアイコン会員入口
トップアイコン1トップ |
高齢アイコン高齢・介護 |
医療アイコン医療|
障害者福祉アイコン障害者福祉|
子どもアイコン子ども・家庭
アイコン



勤怠管理システム・勤務シフト作成支援システム
福祉医療広告

高齢・介護
医療
障害者福祉
子ども・家庭

福祉医療経営情報
トップ

パートナーシップを組織に編み込む

全6回に渡って、「パートナーシップ」をテーマにお届けします。


<執筆>
 ミカタプラス代表 「 鎬洙 氏
大学卒業後、在宅介護サービス、施設介護サービス等で約20年従事。メンタルコーチ、ケアアドバイザーとして、様々なリーダーと関わる中で、「パートナーシップ」のあるコミュニケーションを職場に定着するプログラムを開発し、介護施設・医療機関に提供している。「理由を探る認知症ケア」著者、パラダイムシフトコミュニケーション®トレーナー、兵庫県介護支援専門員実務・更新研修講師、介護福祉士・介護支援専門員・主任介護支援専門員


第5回:上司と部下のパートナーシップ

誤解されている名言

 「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」(@)

 これは、元日本海軍の山本五十六の言葉です。リーダー研修等で引用される機会が多いため、経営者やリーダーであれば、この名言はご存知だと思います。

 まずは自分がやって見せて、それを口頭でも説明したうえで、実際に本人にやらせてみて、ほめることで人は成長する―という意味合いで引用されることがありますが、これには誤解があります。

 それは、この名言の続きを読むと明確になります。

 「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」(A)

 「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」(B)

 実は、冒頭の文は「人を動かす」時のことを述べていて、人が育つためのポイント(A)や、人が実るためのポイント(B)は、続く文章のなかで述べられているのですが、多くの人は@しか知りません。

 そして、わたしたちが求めているのは、いちいち指示・命令をしなくても、自分で考えて行動できる人材ではないでしょうか。ところが、初めの一文だけが一人歩きしたことで、「仕事を任せて自分なりにやらせることで、自分で考えて行動する人材が育成できる」と信じてしまい、AやBをおろそかにしている人がいるようです。

それを部下は「丸投げ」と呼ぶ

 部下が仕事で成果を出せるようになるためには、自分なりに考えてやってみて、成功も失敗も体験することは、確かに重要です。

 例えば、自転車を乗りこなすのに、頭でいくら理屈や理論を理解していても、実際に乗ってみなければいつまでたっても乗りこなせるようにはなりません。実際に乗ってみて、転びそうになったり、うまく乗れたりするなかで、バランス感覚を体得し、立ち漕ぎができたり、ガタガタ道でも転ぶことなく運転できるようになるものです。人は体験を通して成長していくということは確かなようです。

 しかしながら、上司が部下に仕事を任せて、部下が「丸投げだ」と捉えているとしたら、まったくの逆効果です。

 上司は丸投げしたつもりはないにもかかわらず、部下は丸投げされたと受け取っているとしたら、上司としても不本意でしょう。おまけに期待するような結果が出ないことを、「上司が丸投げだからだ」と口実にされたのではたまったものではないでしょう。

 一方、部下においては、上司から「あとは君に任せたよ」と言われたことで、(上司への)相談のしにくさを感じて一人で抱え込んでしまうことも起きるかもしれません。あまりにも事態が好転しないと、「丸投げされた」という被害者意識が拡大し、やる気を失い、チームが成果を出せない状態が長引く場合もあります。

 いずれにしても、上司も部下も相手のことを頼れる存在(パートナー)として捉えるというよりも、必要以上に気を使ったり、怯えたりするような存在になってしまっているとしたら、それはパートナーシップが欠けている状態だといえるでしょうし、成果を生み出す建設的な話し合いや支え合いは芽生えにくいでしょう。

ポイントは「プロセス」にある

 わたしのこれまでの経験上、上司が部下に仕事を任せた時から、結果がでるまでの間、次に例示するようなコミュニケーションが起きている時に人は「丸投げされた」と解釈することが多いとみています。

・ 経緯や基本的な考え方、判断基準も示されぬまま任される

・任せたという割には、打ち出したアイディアが却下され続ける

・状況が進展していない時だけ詰問される

・状況が好転していても承認や労いの言葉もない

 任せることが問題なのではなく、任せた後のコミュニケーションに問題がある場合がほとんどです。やや抽象化すれば、冒頭で紹介した山本五十六の名言のAやBが乏しいとも言えます。

 以下、その状況を改善するいくつかのアプローチを提案します。

◆「最近、どう?」と声をかけて、話す機会を与える

 仕事を任せられた部下も初めは意気揚々と取り組めることもあります。しかし、チーム内にジレンマを抱えていたり、マネジメント上で行き詰まることが起きたりして、悩んだり、決められなかったりすることも出てきます。それらをただ上司に話すだけで、クリアになれたり、整理がついたりすることもあります。

 一番、手っ取り早いのは「最近、どう?」と尋ねて、自由に自分やチームの状況を話せる機会を与えることです。叱咤激励を目的にするのではなく、部下が話すことで整理がつく時間を共有する目的でやってみてください。

◆発想を柔らかくするエクササイズを取り入れる

 そして、何か問題にぶつかった時、思考が堂々巡りになったり、消極的な思考に陥ったりすることがあります。そのような時には、解決策やアイディアを出し合うにしても、発想が乏しくなりがちです。

 というのも、解決策やアイディアを思いついても、言葉にする前に「できるかできないか」のフィルターにかけて、結局「無理だよね」と勝手に決めてしまい、場全体でみると沈黙が続くということになりがちです。

 そこで、「検討」時間と「決断」時間をくっきりと分けてみるのも一つです。

 「いまから10分間、アイディア出しの時間にしよう。公序良俗に反するもの以外はなんでもOK。できるかどうかじゃなく、発想を柔らかくするエクササイズだと思ってなんでも出しあおう」と宣言し、10分間やってみるのです。そのあとは、どれを採用するかは緩やかに決めていく、場合によっては採用を保留してアイディアを温めておいて、後日、決断するというのもありです。

 大切なのは、こぢんまりした発想を柔らかくする時間を、チームでもつことです。

◆“基準”を明確にする

 意外と、これだけでも効果があると言えるのが”基準“を明確にすることです。

 人はそれぞれに経験してきたことや持ちあわせている価値観が違います。そのため、判断や行動の基準もひとそれぞれです。「そのくらい聞いてくれればよかったのに」とあなたが思うこと、ありませんか? 部下が抱く「丸投げ感」の背後に、もしかすると「いまさら上司にこんなこと聞けない」という価値観が隠れている可能性もあります。

 そのようなことも鑑みて、例えば、「自分なりに考えてみて、チーム内にジレンマが生じるようなことがあれば、いつでも相談してきてね」と伝えておけば、少なくともジレンマが生じた時には相談をしやすくなるでしょうし、それ以外の事柄でも「ジレンマではないんですが…」と相談を持ちかけてくる可能性もあるでしょう。

 他にも、「物事を決定する基準」、「方針を変更する基準」、「報告をあげる基準」などを一致させておくと、上司は部下に信頼して任せられますし、部下もその基準に則って安心して取り組めるので、一石二鳥です。

 ここで3つのアプローチをあげましたが、採用してみてもよいと思えるアプローチを選んで試してみてもいいでしょうし、あなた自身が上司と部下のパートナーシップを深めるうえで役立ちそうなアプローチを考えてやってみてもよいでしょう。

 経営者も管理職も、時として孤独を感じる瞬間があります。全員に反対されてでも決断をしなければならない時もあるでしょう。しかし、一人でも二人でも自分のよき理解者がともにパートナーとしていてくれるだけで、気持ちが軽くなったり、目の前がパッと明るくひらけてアイディアが浮かんだりするものです。

 上司と部下の間にパートナーシップが感じられるコミュニケーションが広がれば、それは自ずと現場にも広がりますし、ひいては職員と利用者・家族との間にも伝播していく可能性もありますので、ぜひ一つでも二つでも試してみることをオススメします。

※ この記事は月刊誌「WAM」2020年8月号に掲載された記事を一部編集したものです。
月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。

ページトップ