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第1回:社会福祉法人制度改革の今日的意味
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社会福祉法人の経営ガイド

この連載では、社会福祉法人という対象に絞った経営の考え方を皆さんとともに共有していきます。


<執筆>
独立行政法人 福祉医療機構
経営サポートセンター シニアリサーチャー
千葉 正展

本連載の目的・ねらい

平成28(2016)〜29(2017)年にかけて施行された改正社会福祉法に基づく社会福祉法人制度改革。施行後3年を経てもはや制度改革を論ずるのは食傷気味とお考えの方も多いと思います。

他方、社会福祉法人を取り巻く経営環境は、この間で大きく変化しつつあります。報酬や委託費・公定価格などの改定、人材確保の困難さと人件費負担の上昇など、どれも組織の舵取りにとってはアゲインストな要因ばかりで、年々その深刻さも増しています。こうした難局をどう乗り切っていくか。それを基本で支えるのが経営だと考えます。

今回から始まるこの連載では、社会福祉法人という対象に絞った経営の考え方を皆さんとともに共有したいと思います。

社会福祉法人制度改革の意味

社会福祉法人は社会福祉事業の中心的な担い手であるだけでなく、営利企業など他の事業主体では対応が困難な福祉ニーズに対応する公益性の高い非営利法人です。このため法人の公益性・非営利性を徹底するとともに、国民に対する説明責任を果たし、地域社会に貢献する法人のあり方を確立することが、先の社会福祉法人制度改革の目的だったとされています。

社会福祉法人批判への対応

一方でこの制度改革については、「社会福祉法人の内部留保批判にエビデンスで反論するため」、「企業と社会福祉法人のイコールフッティングの議論・社会福祉法人不要論に対する反論として社会福祉法人の存在意義を明確にするため」、「社会福祉法人に対する課税論に対して非課税扱いに相応しい公益性を示すため」、「不祥事や法人の私物化が一部でされているという批判に対して公器としての襟を正したガバナンスを示していくため」、「零細事業体が多い社会福祉法人の大規模化・協働化を進めることで社会資源の効率化を示すため」、「社会福祉事業の実施にしか対応せず制度のない分野でのニーズ対応が不十分という批判に対して社会福祉法人の公益的性格を明確化するため」など、さまざまな側面からこの法人制度改革に真摯に取り組まなければならない必要性が訴えられてきました。ただこれらの議論は、いずれも部外者からの批判への対応であり、批判に対する受身の対応では、なかなか本腰が入らないことも事実です。

社会福祉法人が国民のセーフティネットを支える不可欠な法人であり、一部の偏った指摘によって法人不要論につながることは決してあってはならないことです。このため、一般国民の目から見ても社会福祉法人が必要で重要だということを認知してもらうために、社会福祉法人の側でも国民にわかりやすい形で制度でカバーされない地域の福祉ニーズへの積極的な取り組みを示していくことが重要です。

法人が取り組む福祉サービス自体も大きな転換点

福祉サービスに係る今日の政策の基軸は「地域共生社会」です。ただこれまで我々が目にしてきた社会福祉事業とは異なり、地域共生社会というスローガンでは具体的な活動がイメージできないという指摘も多く見られます。社会福祉事業という制度は、支援を要する者の典型的な福祉ニーズに着目し、その最大公約数を制度化し、全国一律にトップダウンで網をかけていく方法がとられました。このため例えば、高齢者で身体介護が必要となった者では在宅で介助、通所して介助、施設入所して介助などのように、対象者、提供されるサービスの仕組み、提供の要件などが明確になっていました。

しかしながら、今日の地域共生社会での取り組みは、支援を要する者を全人的に捉え、そこで発生する複雑で、多様な福祉ニーズに個別支援していこうとするものだといわれています。家族も生活形態も社会関係も生計・経済状況も多様になっています。個別支援するためには複合化した個々のニーズを包括的に捉え、対応していくことが求められます。とくにそうした個別対応のためには、広域的な圏域での対応ではなく、日常生活圏域での身近で多様な主体による支援のミックスが有効だとされています。その意味では、従来型の制度に基づく給付としての社会福祉事業では地域共生社会を支えていくことは難しくなってきています。

近時、自然災害が多発化激甚化し、福祉についてはDWATや福祉避難所などの新たな対応が求められています。

こどもの貧困・貧困の連鎖、引きこもり、いじめ・虐待など対象者の問題状況も複雑化・多様化しています。そうした支援を要する者の発見・対処方法も難しさを増してきています。

国土構造も大きく変容し、中山間地や離島など人口が極端に減少し、限界集落・消滅集落などの問題も顕在化し続け、そうした地域での支援を担ってきた社会福祉法人にとって、残された住民に対するセーフティネット保証をどう継続していくかも大きな問題です。

逆に人口が未だ集積を続ける都市部では、ますます人と人とのつながりが希薄化し、コミュニティーの崩壊が進み、要支援者の孤立に拍車がかかっています。こうした地域で活動する社会福祉法人においては、まちづくり・地域住民の意識醸成・参加の促進などへの取り組みが期待されるとともに、ソーシャルワークの専門機関として支援ニーズのアセスメントや支援方法の特定、地域資源のコーディネイトなどの機能の発揮も期待されています。

2025年問題から2040年問題へ

かつてわが国の社会保障の議論では2025年問題への対応が重要でした。2025年は団塊の世代がすべて後期高齢者になり、医療・介護などへのニーズが爆発的に増大し、それに対する財政制度面・社会的供給基盤面などにおける対応をどうするかがその議論の中心でした。

しかし今日では、2040年問題が議論されています。2025年を過ぎその先の2040年に向けては、当然高齢人口に対する医療・福祉・介護ニーズが高止まりします。ところが、それを支える現役世代(生産年齢人口)が今後急速に減少し始め、供給側の制約が顕在化する。これが2040年問題の本質です。福祉人材確保、外国人労働力の活用、ICT・ロボット活用、タスクの見直しなど福祉サービスを担う社会福祉法人にとっても大変重い課題がのしかかっていくことになります。

新たな福祉サービスへの挑戦を支える経営管理

地域共生社会の推進としてさまざまな地域福祉ニーズに地域住民の参加も促しながら、その対応を進めていくためには、ソーシャルワーク・子育てのプロがいる拠点である社会福祉法人には、今後ますます大きな期待がされることになります。

一方、社会福祉法人についてみると、その実施事業の大半が社会福祉事業であり、委託費や報酬等の公費からの収入に依存している現状があります。国の財政事情を踏まえると、社会福祉法人が得る事業収入が今後飛躍的に拡充していくことは考えられません。

2040年問題に対して、福祉を支える人材の確保も今後大きな困難が予想されます。

収入や人材が限定されるなか、新たな福祉サービスへの取り組みが期待されるという矛盾した状況のなか、社会福祉法人が新たな挑戦に踏み切るのは容易なことではないでしょう。しかしそうした状況だからこそ、経営の舵取りが重要になるのです。たとえば、少しでも日常業務でのムダを節約し、地域に再投下する財務余力の獲得を目指すことが第一歩になるかも知れません。

働きがいや魅力ある職場を作って福祉人材を吸引する組織を目指していくことも求められます。

さらに将来的には、社会福祉法人自らが新たな資源の獲得努力を進めていくことも必要かも知れません。その場合は資源獲得先の開拓やその必要性の共感を得るための情報発信・広報、資源提供者へのアプローチやフィードバックも必要です。資源を獲得する基礎には、資源提供者に対して社会福祉法人としての信頼を獲得していくことが不可欠です。このため、ガバナンスの確立や資源提供者へのマーケティング活動も重要となるでしょう。

社会福祉法人の制度改革では、ガバナンス、透明性、財務規律などの取り組みが求められました。見方を変えると、これらの取り組みは今後の社会福祉法人が直面するさまざまな課題への解決の糸口になると考えられます。法人制度改革の文脈を離れて、それらの取り組みを深掘りし、新たな時代に向けて磨きをかけていくことが大切だと思います。

※ この記事は月刊誌「WAM」2020年4月号に掲載されたものを掲載しています。

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