2-2.法人の体制整備
社会福祉法人の経営環境が大きく変化する中で、社会福祉法人の自主的な判断のもと、経営基盤の強化を図るとともに、非営利セクターの中核として、福祉分野での専門性を生かし、地域住民の抱える様々な地域生活課題への対応が求められます。その手法についていくつか紹介します。
小規模法人の連携事例
■ 高齢者関係の法人が連携している事例 ・ 特別養護老人ホームを運営する31法人ネットワーク化。 ・ 介護人材の定着に向け、認知症や身体拘束等のオンライン講座の開催や刑務所出所者の生活支援に向けたオンライン講座の開催 ■ 保育関係の法人が連携している事例 ・ 市内の保育所関係施設がネットワーク化 ・ 合同面接会の実施や、地域貢献事業として各園の園外散歩の機会などを通じて地域における単身高齢者に対する見守り等を実施。 ■ その他の事例はこちら 令和2年度における「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」の取組例について(第3回 社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会[資料2] (PDF:458KB) 厚生労働省
WAM助成先の取組みからみる連携の事例
・ WAM助成では、制度の狭間にある福祉課題に対して、異業種・多機関による連携・ネットワークを構築し、課題解決に取組む事業を支援します。
連携による活動事例をみる
WAM助成 e-ライブラリー(電子図書館)(WAM) 助成先訪問レポート(WAM) また、新たに「社会福祉連携推進法人制度」という新たな制度が設けられ、社会福祉法人の経営基盤を強化していくことも求められています。 社会福祉連携推進法人制度はこちら
社会福祉法人における合併・事業譲渡等の検討のポイント
STEP 1● 合併・事業譲渡等の目的の明確化
合併、事業譲渡等を行う際には、まず、その目的が明確でなければなりません。 目的を明確にするためには、以下の点を整理することが必要です。 1) 合併、事業譲渡等は、法人の理念・経営戦略に沿うものかどうか 2) 合併、事業譲渡等は、地域福祉の維持・発展に寄与するかどうか 3) 合併、事業譲渡等は、地域住民の抱える地域生活課題に対応するものとなっているか 合併、事業譲渡等を行う目的が明確になれば、その可否を判断するために、合併、事業譲渡等の相手となる法人を調査することになります。 調査にあたっては、以下のような項目について整理することが必要です。調査に際しての情報は、可能な限り協議の前に入手し、分析することが肝要です。そのほか、平成 28 年改正法で新たに規定された、特別の利益供与の禁止や利益相反等に抵触することのないよう、注意が必要です。 また、事業の譲渡しの場合には、当該事業を実施することのできる法人であるか、当該事業の継続性が見込まれるかが特に重要となります。 (合併、事業譲渡等の相手となる法人に係る調査内容の例) 1) 法人の沿革 2) 経営理念、経営戦略、経営方針 3) 組織、事業 4) 評議員、理事、監事の構成 5) 職員の状況(労働組合、年齢構成、人事制度等) 6) 監事監査、会計監査の状況 7) 他分野の場合には、その分野の業界分析 8) 地域における需要と競合事業者の状況 9) 過年度、現在の財務状況と将来的な財務状況の見通し 10)事業展開する各地域の事情 11)合併、事業譲渡等を行った場合の相乗効果 合併、事業譲渡等の意思決定を行う前に、財務的な調査、特に、資産、負債(簿外負債にも留意)の状況等についての分析、調査を実施することが重要です。また、収益性分析については、その後の事業活動を通じて、事業収益を安定的に確保することができるかどうかに着目することが重要です。 社会福祉法人は、営利性を追求するものでは決してありませんが、合併、事業譲渡等を通じて、事業の継続性、自立性を確保し、質の高い福祉サービスを安定的、継続的に提供しなければならないと考えられるため、財政状態や収益性分析を行うことは重要です。 なお、調査にあたっては、公認会計士等の専門家の利用を行う方法も考えられます。 特に以下のような経理処理についてチェックを行うことも必要です。※ 1) 減価償却費(国庫補助金等特別積立金取崩額を含む)の会計処理 2) 退職給付引当金の会計処理(年金債務や退職給付債務の計上不足) 3) 賞与引当金、徴収不能引当金の会計処理 4) 資産の評価損や有価証券の評価損益の会計処理 5) 収益及び費用(人件費、事業費、事務費)に関する発生主義 (実現主義)の会計処理 6) 基本金の会計処理 7) 過剰、不適正な報酬等の支払処理 8) 簿外債務等の注記もれ ※社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果(2019 年(令和元年)8月厚生労働省社会・援護局福祉基盤課)を参考に記載 合併、事業譲渡等における将来事業計画については、複数年分の計画(具体的な事業内容、見込計算書類等)を作成する必要があります。この将来計画は、過度に主観的なものであってはならず、客観的に一定の根拠をもって作成されていることが必要であり、法人の評価の基礎として足りる十分な合理性を有しているかどうかを判断する必要があります。 将来事業計画の策定、又は法人評価を行うにあたっては、以下の点が参考になります。 1) 法人の理念や合併、事業譲渡の理念が反映されているかどうか 2) 事業戦略(事業展開、サービス提供など)、人事戦略(賃金制度、採用計画など)、財務戦略(資金調達、使途)といった各個別戦略との整合性があるかどうか 3) 具体的かつ合理的に数値化されているかどうか 4) 根拠が明確化されているかどうか 5) 社会福祉充実計画等の内容と不整合がないかどうか 【参考】 社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン(厚生労働省)
【参考】 社会福祉法人の合併の手引き「合併・事業譲渡等マニュアル」
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社会福祉法人の経営環境が大きく変化する中で、社会福祉法人の自主的な判断のもと、経営基盤の強化を図るとともに、非営利セクターの中核として、福祉分野での専門性を生かし、地域住民の抱える様々な地域生活課題への対応が求められます。その手法についていくつか紹介します。
法人間連携 | 複数の法人間で協力関係を構築すること。連携の範囲や内容などの明確な定義はなく、地域課題等に対して協働で対応すること、人材確保や災害対応等を法人間で協力することなどの取組等が行われます。 |
解説 |
▶期待される効果 法人間連携であれば、合併、事業譲渡等の手続きと比較し容易に取り組むことができ、意思決定から短期間で柔軟に実行に移しやすいと考えられます。 |
■ 高齢者関係の法人が連携している事例
・ 特別養護老人ホームを運営する31法人ネットワーク化。
・ 介護人材の定着に向け、認知症や身体拘束等のオンライン講座の開催や刑務所出所者の生活支援に向けたオンライン講座の開催
■ 保育関係の法人が連携している事例
・ 市内の保育所関係施設がネットワーク化
・ 合同面接会の実施や、地域貢献事業として各園の園外散歩の機会などを通じて地域における単身高齢者に対する見守り等を実施。
■ その他の事例はこちら
令和2年度における「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」の取組例について(第3回 社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会[資料2] (PDF:458KB)
厚生労働省・ WAM助成では、制度の狭間にある福祉課題に対して、異業種・多機関による連携・ネットワークを構築し、課題解決に取組む事業を支援します。
WAM助成 e-ライブラリー(電子図書館)(WAM)
助成先訪問レポート(WAM)
また、新たに「社会福祉連携推進法人制度」という新たな制度が設けられ、社会福祉法人の経営基盤を強化していくことも求められています。
社会福祉連携推進法人制度はこちら
合併 | 複数の社会福祉法人が、吸収合併または新設合併により統合すること。 社会福祉法に規定されている合併は、社会福祉法人間のみで認められています。 |
解説 | ▶期待される効果 ○ 法人が一体となることによる経営基盤の強化、事業効率化 ・ 法人が一体となり、本部機能や財務基盤が強化されることにより、事業の安定性と継続性が高まり、建物の修繕や設備の増強など、サービスの質の向上に向けて積極的に設備投資を行うことが可能となることが考えられます。 ・ スケールメリットを活かすことによって、資材調達などのコストを削減することが可能となることが考えられます。 ○ サービスの質の向上、組織活性化 ・ 相手方の法人の人材、ノウハウ、設備等資源を活用することにより、既存の資源の補完や高度な活用が促され、サービスの質の向上が考えられます。 ・ これまでにない新たな種別の施設を取り入れた場合には、提供するサービスの幅が広がることが考えられます。 ・ 互いの法人が有機的に結合し、職員間の意識が刺激されるなど新たな法人風土の醸成が考えられます。 ○ 人材育成 ・ 新たな領域の知識・技能・経験を持った職員を確保することができ、職員間の人事交流が促進されれば、各職員のスキル拡大・向上が考えられます。 ・ 規模拡大によって教育への投資が促され、外部講師招へいや外部研修への参加機会の確保など、充実した教育機会の提供が考えられます。 |
事業譲渡 | 特定の事業を継続していくため、当該事業に関する組織的な財産を他の法人に譲渡・譲受すること。土地・建物などの単なる物質的な財産だけではなく、事業に必要な有形的・無形的な財産のすべてを他の法人に譲渡・譲受すること。 |
解説 | ▶期待される効果 合併において挙げられている効果に加え、以下が考えられます。 ○ 事業継続が困難な社会福祉事業の継続 ・ 事業継続が困難になっている社会福祉事業について、事業譲渡等により、事業継続の可能性の広がりが期待されます。 ○ 事業拡大、拡充の負担軽減 ・ 他法人から事業を譲り受けることにより、即戦力の資源を活用することができ、新設、増設する場合よりも、迅速な事業展開や、事業化までの負担の軽減、事業の拡大、拡充が考えられます。 |
合併、事業譲渡等を行う際には、まず、その目的が明確でなければなりません。
目的を明確にするためには、以下の点を整理することが必要です。
1) 合併、事業譲渡等は、法人の理念・経営戦略に沿うものかどうか
2) 合併、事業譲渡等は、地域福祉の維持・発展に寄与するかどうか
3) 合併、事業譲渡等は、地域住民の抱える地域生活課題に対応するものとなっているか
合併、事業譲渡等を行う目的が明確になれば、その可否を判断するために、合併、事業譲渡等の相手となる法人を調査することになります。
調査にあたっては、以下のような項目について整理することが必要です。調査に際しての情報は、可能な限り協議の前に入手し、分析することが肝要です。そのほか、平成 28 年改正法で新たに規定された、特別の利益供与の禁止や利益相反等に抵触することのないよう、注意が必要です。
また、事業の譲渡しの場合には、当該事業を実施することのできる法人であるか、当該事業の継続性が見込まれるかが特に重要となります。
(合併、事業譲渡等の相手となる法人に係る調査内容の例)
1) 法人の沿革
2) 経営理念、経営戦略、経営方針
3) 組織、事業
4) 評議員、理事、監事の構成
5) 職員の状況(労働組合、年齢構成、人事制度等)
6) 監事監査、会計監査の状況
7) 他分野の場合には、その分野の業界分析
8) 地域における需要と競合事業者の状況
9) 過年度、現在の財務状況と将来的な財務状況の見通し
10)事業展開する各地域の事情
11)合併、事業譲渡等を行った場合の相乗効果
合併、事業譲渡等の意思決定を行う前に、財務的な調査、特に、資産、負債(簿外負債にも留意)の状況等についての分析、調査を実施することが重要です。また、収益性分析については、その後の事業活動を通じて、事業収益を安定的に確保することができるかどうかに着目することが重要です。
社会福祉法人は、営利性を追求するものでは決してありませんが、合併、事業譲渡等を通じて、事業の継続性、自立性を確保し、質の高い福祉サービスを安定的、継続的に提供しなければならないと考えられるため、財政状態や収益性分析を行うことは重要です。
なお、調査にあたっては、公認会計士等の専門家の利用を行う方法も考えられます。
特に以下のような経理処理についてチェックを行うことも必要です。※
1) 減価償却費(国庫補助金等特別積立金取崩額を含む)の会計処理
2) 退職給付引当金の会計処理(年金債務や退職給付債務の計上不足)
3) 賞与引当金、徴収不能引当金の会計処理
4) 資産の評価損や有価証券の評価損益の会計処理
5) 収益及び費用(人件費、事業費、事務費)に関する発生主義 (実現主義)の会計処理
6) 基本金の会計処理
7) 過剰、不適正な報酬等の支払処理
8) 簿外債務等の注記もれ
※社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果(2019 年(令和元年)8月厚生労働省社会・援護局福祉基盤課)を参考に記載
合併、事業譲渡等における将来事業計画については、複数年分の計画(具体的な事業内容、見込計算書類等)を作成する必要があります。この将来計画は、過度に主観的なものであってはならず、客観的に一定の根拠をもって作成されていることが必要であり、法人の評価の基礎として足りる十分な合理性を有しているかどうかを判断する必要があります。
将来事業計画の策定、又は法人評価を行うにあたっては、以下の点が参考になります。
1) 法人の理念や合併、事業譲渡の理念が反映されているかどうか
2) 事業戦略(事業展開、サービス提供など)、人事戦略(賃金制度、採用計画など)、財務戦略(資金調達、使途)といった各個別戦略との整合性があるかどうか
3) 具体的かつ合理的に数値化されているかどうか
4) 根拠が明確化されているかどうか
5) 社会福祉充実計画等の内容と不整合がないかどうか
【参考】 社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン(厚生労働省)
目次: 1.はじめに 2.社会福祉法人を取り巻く現状と課題 3.社会福祉法人の事業展開と期待される効果 4.合併・事業譲渡等の手続と留意点 | |
令和2年9月11日厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知「社会福祉法人の事業展開に係るガイドラインの策定について(周知依頼)厚生労働省 PDF[2,561KB] |
【参考】 社会福祉法人の合併の手引き「合併・事業譲渡等マニュアル」
合併と事業譲渡等については、社会福祉法等に定められた手続きを行う必要があることから、その手続きや法令等について記載し、実施におけるポイントと留意点、手続きについてまとめられているマニュアルです。 目次: 第 1 章 社会福祉法人における合併・事業譲渡等の検討のポイント 第 2 章 社会福祉法人における合併・事業譲渡等の課題と解決に向けた取組 第 3 章 社会福祉法人における合併の手引き 第 4 章 社会福祉法人における事業譲渡等の手引き | |
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