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2.実務研修の各課程で学ぶこと−その12.実務研修の各課程で学ぶこと−その1
介護支援専門員実務研修では、どのようなことを学ぶのでしょうか。ここでは実務研修で行われる講義や実習の内容と、受講の際のポイント(心構え)を紹介します。都道府県によって若干異なる部分もありますので、参考としてご覧ください。
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前期1日目 制度の内容やケアマネジメントの基本を学ぶ
実務研修時間は原則87時間で、通常は前期・後期に分けて実施されます。 研修の初日は、介護支援専門員の倫理や基本姿勢についての講義が中心となります。介護支援専門員にとっては業務の出発点となる知識です。具体的な研修内容は以下のとおりです。 1.介護保険制度の理念と介護支援専門員(講義2時間) 介護保険制度の基本理念を理解するとともに、利用者の自立支援を図るために必要な介護支援専門員の機能や役割を学びます。後者については、居宅サービス計画(ケアプラン)等の作成、保険給付、給付管理等の関係性についての基本的な理解を図るための講義が行われます。 2.介護支援サービス(ケアマネジメント)の基本(講義2時間) 介護支援サービスの意義と目的、介護支援サービスにおけるチームケア、介護支援サービスのプロセスについての講義が行われます。また、居宅介護支援と施設サービス計画の双方がケアマネジメントの対象であること、利用者の権利擁護の視点に立った介護支援専門員の倫理と基本姿勢、身体拘束廃止の意義等について学びます。 3.介護認定等の基礎(講義2時間) 要介護認定等に係る認定調査や要介護認定等基準の基本的な視点と概要を理解し、利用者の状態がどのように要介護度等に反映されるかについて学びます。このとき、主治医意見書の記載内容についての理解も深めます。また、認定調査とケアマネジメントのプロセスにおけるアセスメント(解決すべき生活全般の課題の把握)の関連等についての講義も行われます。 前期1日目の講義を受ける際に心得ておきたいこと
前期1日目の講義は、介護支援専門員にとって基本中の基本と言えます。講義での内容を忘れずに、現場に出てからも実践のなかで折にふれ振り返ることが大切です。 介護支援サービスは、利用者にとって必要な介護をマネジメントし、支援を行うことです。その際、利用者の自立や自己実現、そして要介護状態にならないための予防という観点が重要です。 また、ケアマネジメントによる支援は経験則で行われるものではないという点も重要です。実践に際して重要なのは、一定のプロセスを踏むことです。 そのプロセスとは、
というものです。なお、介護サービスは各専門スタッフによって実施されるため、チームによるアセスメントや評価、そして利用者や家族を交えたサービス担当者会議による合意といったチームアプローチの手法も必要となります。また、施設におけるケアマネジメントでは、身体拘束の禁止や権利擁護の視点も重要なカギとなります。 前期2日目 ケアマネジメントのための基礎技術について学ぶ
2日目は、「ケアマネジメントのための基礎技術」を学びます。具体的な研修内容は以下のとおりです。 1.受付及び相談と契約(講義1時間) 利用者と初めてかかわる際に必要な技術を学びます。介護サービスの利用者は、必ずしも「自ら介護サービスの利用を希望して介護支援専門員に相談する」人ばかりではありません。したがって、介護サービスを必要とする利用者をいかに発見するかも重要な学習内容です。また、介護支援サービスの契約は法律行為であり、利用者が主体者であることを保障するために苦情申し立てや権利擁護が制度化されています。これらの認識を深めるとともに、利用者の自立を支援する視点の必要性について学びます。 2.アセスメント、ニーズの把握の方法(講義2時間、演習4時間) アセスメントによって解決すべき生活全般の課題が明らかになることを理解するとともに、的確な情報の把握と分析の必要性について学びます。情報の収集にあたり、利用者の希望や要望の背景を把握し理解することがなぜ必要なのか、また、利用者の生活の現況から生活機能(WHOのICF(国際生活機能分類)による)とその背景を把握し、理解する視点がなぜ必要なのかという認識を深めます。また、収集された情報から解決すべき課題を明らかにしていく方法と技術について、演習をとおして理解します。 前期2日目の講義を受ける際に心得ておきたいこと
前期2日目の講義のなかで重要なのが、「アセスメント、ニーズの把握の方法」です。 利用者・家族の介護や生活に何らかの問題が生じた場合、相談を受ける介護支援専門員は、「課題はどこにあるのだろうか。どうすれば解決できるか」を意識しながら話を聴き、解決方法を考えます。気をつけなければならないのは、「皮相的なアセスメントでは、ニーズがつかめないこともある」ということです。 例えば、「炊事に困っている」という相談があったとします。「では、給食サービスをご紹介しますね」という対応だけでよいのでしょうか。ある人は、「私は買い物に行ってくれれば、自分で作りたい」という希望があるかもしれませんし、または「包丁がうまく使えない。食材を切る支援を受ければ、自分で調理ができる」のかもしれません。さらに、機能訓練を行うことで、また自分で調理ができるようになるかもしれません。 このように、利用者や家族から具体的な要望があったとしても、介護支援専門員はそのまま受け取るのではなく、専門職の目で吟味しなければなりません。そのために「深いアセスメントをとおして真のニーズを把握する」技能が必要になるわけです。 また、その人に本当に必要なサービスを介護サービス計画(ケアプラン)に位置づけるためには、利用者の身体状況や疾患、今後の回復状況や予後、経済状態、家族関係、価値観等、利用者に関する多くの情報を把握する必要があります。アセスメントが不十分な場合、不適切なサービスの利用を計画することになり、結果的に利用者に不利益をもたらすことになってしまいます。その人に合った効果的なケアプランを作成するうえでも、しっかりとしたアセスメントを行うことが求められます。 アセスメントを行う際に参考になるものとして、厚生労働省では、23項目からなる「課題分析標準項目」を定めています。実務研修では、これらのアセスメント項目や、さまざまな団体・機関が開発したアセスメント様式などについての説明が行われ、アセスメントの方法についての理解を深めます。
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