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ケアマネジャーのしごとガイド

3.アセスメント
「2.最初の面接・相談(インテーク)」によって相手の基本情報や訴えを把握しました。次に、アセスメントを行うことで、その人にとっての解決すべき課題(ニーズ)を明らかにします。ここでは、アセスメントのための聞き取りと中身を深めるための面接のポイントを解説します。
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利用者宅への訪問時の基本マナー

 アセスメントは、多くの場合は利用者の居宅を訪問して行われます。居宅で利用者や家族と面接を行い、利用者・家族の状況や相談の背景・原因などの情報を総合的に勘案しながら、解決に向けた道筋を探っていくことになります。 こうした流れをスムーズに実行するうえでは、相手の心象を良くし、信頼関係を構築することが重要になります。まずは、個人の居宅を訪れる際の基本マナーをおさらいしましょう。

1.玄関先でのマナー

利用者の居宅に一歩入った地点、つまり玄関先でのマナーは重要です。利用者は、初めて来訪するケアマネジャーがどのような人なのかわかりません。おのずと玄関先での行動は注意深く見られることになりますので、以下の4点を特に注意しましょう。

  • @ コート、マフラーなどは玄関の外で脱ぎ、片手で持ち、挨拶をします。
  • A 正面を向いたまま靴を脱ぎます。
  • B つま先を玄関のドアに向け、端に寄せて置きます。
  • C 傘やレインコートがある場合は、室内に持ち込まず、玄関の外に置かせてもらいます。

2.座る位置に関するマナー

部屋へ通されて、迷いがちなのが座る位置です。基本となる「上座・下座」の考え方は覚えておきましょう。和室では、床の間に最も近い位置、もしくは入り口から最も遠い位置が上座となりますので、入り口に近い下座に座ります。座布団があってもそこには座らず、横に(畳の上に)座り、座布団を使うよう勧められてから座るようにします。洋室の場合でも、入り口から最も遠い位置が上座となりますので、入り口近くへ着席します。

ただし、時と場合によっては利用者本人の横に座ったほうがよいこともありますので、利用者の状況や援助関係なども考慮して座る場所を決める必要があります。

アセスメントで欠かせないポイント

1.訪問前に事前情報を収集する

アセスメントをより適切に行うためには、事前情報を収集することが重要です。ケースの状況や紹介経路によって異なりますが、多くの場合、ケアマネジャーが利用者に会う前に、利用者の家族や病院、地域包括支援センターなど、さまざまな人や機関から情報がもたらされます。事前情報をつないでいくと、知りたいことが浮かび上がってきます。その項目をメモするなどして面接に臨めば、的はずれな質問は少なくなるでしょう。

ただし、事前情報を他者からもらう場合、その情報には他者の価値観が含まれている点に注意することが必要です。家族からの情報であっても鵜呑みにはせず、本人に確かめることが大切です。相手が専門職であれば、その専門職独自の価値観や考え方が含まれることも多いので、その点に注意を払います。

事前情報は頭に入れつつも、「自分の目と耳で確かめながら確認する」という気持ちでアセスメントしましょう。

2.「一緒に考えていく」という意識をもつ

「あなたは○○できますか?」と一方的に聞いたり、質問項目を上から順番に聞き取ったりするのがアセスメントではありません。アセスメントでは、利用者が困っていることやそれを解決するための方法を利用者や家族と一緒に考えていくという意識をもつことが必要です。ケアマネジャーがそうした意識をもってかかわることで、利用者や家族をエンパワメントすることも可能になります。

また、1回の面接でアセスメント項目すべてを聞くのではなく、相手のペースに合わせながら段階的にアセスメントを進めていくことも有効です。

3.具体的に聞く

アセスメントでは、利用者の生活状況をできるだけ具体的に把握することが重要です。「朝食は食べていますか?」「お風呂は入っていますか?」という具合に、「何をしているか」を聞くだけではアセスメント面接としては十分ではありません。大切なのは「何を・どのように実行しているか」 の具体的な内容です。例えば、「朝食は何時頃に食べていますか?」「どんなお茶碗で、どのくらいの量ですか?」「毎朝ご自分で調理をされるのですか?」という具合に掘り下げて聞きましょう。水分補給についても、「個人差はありますが、(500mlの)ペットボトルで2本分くらいが望ましいですが…」などと具体的な目安を示しながらアセスメントすれば、相手も答えやすくなりますし、「ケアマネジャーってそういうことを見てくれる人なのか」とケアマネジャーの仕事の内容も認識してもらうことができます。

4.理由を考えながらアセスメントする

例えば、「一人でトイレに行くことができない」という話が出てきたとき、「一人で行けないのはなぜだろう?」と考えながらアセスメントをすることが大切です。「歩けるのにどうしてだろう?」「以前転倒したのが怖いからだろうか?」「トイレまでの距離が長いからだろうか?」「途中で手すりが途切れているからだろうか?」「時間帯によっては一人で行けることもあるのだろうか?」など、心身機能や身体構造などの直接的な原因だけでなく、環境面や利用者自身の価値観や生活歴などの間接的な原因からも アセスメントすることで、解決方法が見えてきます。その際、自分の思い込みによる推測は厳に慎み、客観的な事実を確かめることが重要です。

アセスメントでの「よくある悩みや疑問」

アセスメント訪問を行う時間帯として最適なのはいつでしょうか。また、訪問に際しては、どれくらいの時間をかければよいのでしょうか。

訪問に適当な時間帯は各家庭によって異なります。できればインテークの際に、どのあたりの時間帯がよいかを聞いておくとよいでしょう。

「アセスメント訪問にかける時間」ですが、ケースバイケースではあるものの、1時間以内を基本とします。相手の話にじっくり耳を傾けることも大切ですが、長すぎると利用者の負担になります。

また、アセスメントの終わりには、次の訪問日を決めるようにします。その際、「次回に確認させてほしいこと」も伝えましょう。相手に心の準備をしてもらうとともに、ケアマネジャーはどんなことを調べるのかという役割を理解してもらうことにもつながります。

訪問時に「お茶やお菓子を出される」ということを聞くのですが、その場合はどうしたらよいでしょうか。断って、相手に不愉快な思いをさせることはないでしょうか。

ケアマネジャーという職業上は「断る」のが基本です。1回手をつけてしまうと、その後は断りにくくなり、相手にも毎回負担をかけてしまいます。初回訪問の際に「いただけない」ことをきちんと伝えましょう。

確かに、断ると相手が不機嫌になったりすることもあります。また、一緒にお茶を飲むことを楽しみにしている方の場合、断ることでその後のコミュニケーションに支障が出ることも考えられます。そうした場合は、「何軒ものお宅を訪問するため、トイレに行きたくなると困るので・・・」という具合に理由をあげると、納得してもらいやすくなります。

監修者
中村雅彦(JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院 居宅介護支援事業所)

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