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ケアマネジャーのしごとガイド

4.計画書(1)を見直そう

4.計画書(1)を見直そう
ここまでは、鈴木さんの作成したKさんの居宅サービス計画書をもとに、Kさんやご家族のこと、また、プラン作成に至るアセスメントに関する情報を確認してきました。ここからは、初めてのケアプラン見直しの時期(短期目標の期限である6月)に、ケアプラン原案を作るつもりで、鈴木さんと話していきます。多少、これまでの情報に追加になる部分もありますので、注意して読み進めてください。
plan
原案に題名無し

では、早速Kさんに提示するプランを作るに際して、見直すべきところを確認していきましょう。鈴木さんの意見を聞いたうえで、私から追加の提案をするという形でよいでしょうか?

はい、結構です。お願いします。

では、第1表から始めましょう。鈴木さんは、どこを直したいと考えていますか?

まず、Kさんと奥さまの「生活に対する意向」を直したいと思います。でも、具体的にどう書けばよいかがわかりません。退院してからこれまで2か月近く経って、できることやできないこともはっきりしてきましたし、奥さまはこれからも自宅で介護を続けていきたいとおっしゃっています。

そうですか。ここは直したいという確認にとどめて、内容は後から考えましょう。ほかにはありますか?

これは初回のプランでしたから、「総合的な援助の方針」に関しても漠然としたものになっています。これをもう少し、Kさんに合ったものにできればいいかなあと思っています。ただ、ここもどう書いてよいか、具体的に決まっているわけではありません。

では、第1表は書き直したいが具体的にはどう書いてよいのか、まだはっきりつかめていないということでよいですか。

はい、そうです。

「生活に対する意向」を見直すために

では、まずKさんと奥さまの意向から考えてみましょう。先ほど鈴木さんは、できることとできないことがはっきりしてきたと言っていましたね。例えばどんなことですか?

当初一番心配をしていたトイレまでの歩行に関しては、今はほとんど心配なくなっています。日中はご自身でトイレに行っていらっしゃいます。しかし夜間は、暗いことや万一転びそうになった場合に奥さま一人では支えきれないため、ポータブルトイレを使用し、Kさんが一人で起きて奥さまはその気配で目を覚まし、見守るだけですむようになりました。

そうすると、排泄に関しては現状のやり方でKさんも奥さまも満足しているということですね。

はい。

ほかにはどんな点がありますか?

お風呂の件ですが、シャワーチェアを使って、身体を洗って流すだけでしたが、リハビリの方とも相談して、今、浴槽に入る練習をしています。手すりや入浴用品を吟味すれば、入れるようになりそうです。また、通院に関しては、ヘルパー介助で行っていますが、この次からは病状も安定しているので1か月に1度でよい、という話になっています。距離も近いし、奥さまからは、家族の付き添いで行けるかもしれないという話が出ています。先生からも、調子がいいと太鼓判をもらったと嬉しそうに話してくださいました。

そうですか。よかったですね。ほかにKさんや奥さまの生活に関して気づいたことや、気になっていることはありますか? また、病気になって諦めてしまったことなどは聞いていますか?

(考え込むように)そうですね・・・Kさんがはじめおっしゃっていた、テレビを見て過ごすことはできていらっしゃいます。もともと前向きな方ですし、リハビリの方に相談しながら練習をして、家の中を歩くことはもうほとんど不自由ないと思います。段差のところの越え方も上手ですし、ドアについてもいつも開けておくことにしたため、今は誰かの助けもいらないそうです。ですから奥さまは先に台所へ行って食事の用意をして、できる頃に声をかけるとKさんが食堂へやってくるというふうに伺っています。

奥さまのほうはどうかなぁ・・・。そういえば、まだKさんを一人にしておくのが心配だから、ご家族の誰かがいないと外出できないとはおっしゃっていました。

今、鈴木さんが言ったことをまとめるとどうなるでしょう。まず、今の表現を変えたほうがいい部分を見つけ、それをどう変えたらよいか考えてみましょう。

内容を吟味しながら表現を考える

Kさんがおっしゃっていたことはほぼ達成されています。以前のようになりたいということですが、どんなことを意味しているのか正直なところまだわかりません。まず、本人の意向を直したいと思います。

鈴木さんは、これまでのKさんを見てきてどんなことを感じていますか?

とても前向きな方で、自分からどうしたらよいかを考え、周囲の力を借りることもお上手です。・・・そうか! これを入れたいと思います。

どう入れるのですか?

病気になる前のように自分の生活を自分で考えて暮らしていくために、周りの人の力も借りながら、自分で考え、決めていきたい」としたいと思います。

Kさんの嬉しそうな表情が浮かんできそうですね。Kさんに了解を取る際に、より具体的な「以前のような暮らし」について話が聞けると、ここに盛り込むこともできるかもしれませんね。

はい、ぜひお聞きしたいと思います。

では、次は奥さまの意向について考えてみましょう。

(自問するように)今は、介護に対してそれほど不安をお持ちのようには感じられません・・・本当にヘルパーに手伝ってほしいのかな・・・。

奥さまが心配していたのは、実際にKさんが転んでしまうのではという不安より、もし転んでしまった際に、自分も膝が悪いしとっさに体を動かせない、結果として助けてあげられないのではないか、ということだったように私は感じていました。ですから、何事もなく毎日を過ごせていることが、安心につながっているのではないでしょうか?

そうかもしれません。それから、以前(「2.ケアプランの背景情報を確認しよう」)お話を伺って気づいた息子さん夫婦のことですが、あの後、お話をお聞きする機会もあり、仕事を持っていることで支障になることはありませんでした。

仲のよいご家族のようでしたからね。お互いを気遣って出た言葉だったのでしょう。では、どのようにしましょう。

「本人の希望通り家で過ごさせたい」。ここはこのままでよいと思います。つけ加えるとすれば、ご自分のことも大事にしていただきたいのです。今のようにKさんを一人にできないからと、外出もしないのではなく、ご自分の受診や用事に安心して出かけていただきたいです。

それを盛り込んでいくのはここがよいですか?

う〜ん、奥さまの意向としては出かけたくないのだから、違いますね(笑)。では、すっきりと「夫が自分の暮らしを決めていけるように協力してお手伝いしていきます」とします。

まさしく、奥さまの意向がはっきり書けましたね。では、鈴木さんの希望していることはどこに入れましょうか?

「総合的な援助の方針」のなかに入れられればと思います。

総合的な援助の方針の考え方

では、「総合的な援助の方針」について、ケアチーム全体でどのような協議が行われましたか?

えっ、ケアチーム全体では協議までは行っていません。サービス担当者会議のときに「こういう方針で」と説明したくらいです。ケアチーム全体で協議しなければいけないものなのですか?

はい。令和3年3月31日に居宅サービス計画書記載要領である老企第29号という通知が改定になって、総合的な援助の方針は、利用者・家族を含むケアチーム全体で協議をして決定する、というルールに変更になりました。案外この変更について理解されていない介護支援専門員が多いので、一度しっかりと老企第29号の「居宅サービス計画書記載要領」を確認してください。

具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?

そうですね。一番オーソドックスというか教科書的な方法は、サービス担当者会議の中で「総合的な援助の方針」を利用者やご家族も含めた関係者全員で考えて決めるという方法でしょう。このとき「総合的な援助の方針」とは何かということを利用者やご家族にもわかりやすく説明しておかないといけません。総合的な援助の方針とは、一言で言えば「ケアプラン全体の要約」ということになるでしょう。わかりやすく言えば、利用者やご家族を含めたケアチーム全体が、どの目標に向かって、どんな考え方や価値観に基づいて、どのような役割分担をして支援していくのか、ということになるでしょう。

なるほど。今までは介護支援専門員である自分が方針を考えて予め計画書原案に記載して、それを見てもらっていただけでしたが、少なくとも全員で確認するというプロセスが必要になるということですね。

そうです。大切なことに気が付きましたね。方法論としては今までと同じで、介護支援専門員が予め計画書原案に記載をして、それを「たたき台」として協議をするという方法も考えられます。この方法だとたたき台に問題がなければ計画書を改めて交付するという手間は省けますよね。

わかりました。改めて記載要領をしっかり確認して、間違いのないようにしたいと思います。

それで、最初の「一日も早く、以前のような生活に戻れるように支援をします」は取りたいと思います。次の部分は、内容はよいのですが、表現を変えたいと思います。特に、後半は「再発」という表現は避けたいです。最後の「あまり負担にならないようにサービスを上手に利用しながら介護を続けてください」という文章も今読み返すと、私が不安だから書いているような気がします。

いろいろ見えてきましたね。鈴木さんはKさんにどんな援助をしたいのですか? それを明確にしてから内容を修正していきましょう。

そうですね。私はKさんの退院してからの様子を見てきて、すごいなあと感心しています。私の予想よりもずっとしっかりなさっていて、自分のことをちゃんと考え行動できる方です。ですから私は、Kさんの決めたことに対してサポートしていければいいと思います。もし、Kさんから求められた場合は提案もしていこうと思いますが。

病気のことについてはどんなふうにお考えですか?

もちろん再発してほしくはありませんが、表現は変えていきたいと思います。主治医の先生とも連携を取っていきたいですし、病気に関しては、私よりもずっとKさんご夫妻のほうがわかっていらっしゃいますから(笑)。

サービスの利用に関してはどうでしょう。

必要な時に適切なサービスを利用していただきたいと思います。

では、今のことをまとめてみましょう。

はい。「Kさんの意向を大切にしながら、その実現に協力をしていきます。主治医の先生を中心に病気と上手につきあっていらっしゃるので、継続していきましょう。サービスの利用は、必要な時に必要なだけ利用していきましょう」としたいです。

これで、計画書(1)の原案はできましたね。

まとめ

「利用者及び家族の生活に対する意向」

修正前

(本人)自宅で介護を受けながら、以前のように好きなテレビを見たりして過ごしたい。家族に身の回りのことで迷惑をかけないようにしたい。リハビリをして、以前のようになりたい。

(妻)本人の希望通り家で過ごさせたいが、自分も膝関節症があり息子夫婦も仕事を持っているので、どこまで介護できるか不安。ヘルパーなどに手伝ってもらいながら、介護をしたい。

修正後

(本人)病気になる前のように自分の生活を自分で考えて暮らしていくために、周りの人の力も借りながら、自分で考え、決めていきたい。

妻)夫が自分の暮らしを決めていけるように協力してお手伝いしていきます。(※原案段階であるため、意向をまず押さえる。詳細な希望は出てきた時点で盛り込む)

「総合的な援助の方針」

総合的な援助の方針については改めて担当者会議を開催して確認してみたいと思います。

記載にあたって心がけたいこと

ここで、第1表の文章に関して、少し整理をしておきたいと思います。

まずは「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」の欄ですが、本人・家族の言葉を聞いたままに載せる例がよく見受けられますが、本人の言葉だからとそのままでいいものなのでしょうか? 違います。相手の言葉に耳を傾け、その奥にあるものや表現できない想いをも聴き取ろうとし、それまで理解してきたものの全体から「意向」として組み立て直して表記してください。私たちケアマネジャーは、“聞く”のではなく“聴く”のが仕事です。「聴く」ためには、利用者が、何を語ったのかということではなく利用者は何を伝えたかったのかを理解することが必要です。言葉の裏にある利用者の真の思いを汲み取ること。それが、意向としてまとめ上げていく第一歩になっていきます。

この欄は、意向を出発点として課題分析を行い、課題を明確にしたのち、再度意向に戻って思考過程に間違いがないかを確認し記載することが求められています。

そして、「総合的な援助の方針」の欄は、今後の目標に向かってどのようにチームで取り組んでいくのかを示すものです。意向を十分に理解しながら、どこへ向かって進もうとしているのかを、わかりやすい短い言葉でまとめましょう。ケアマネジャーの考えばかりが前面に出ていないかにも注意です。

監修者
中村雅彦(JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院 居宅介護支援事業所)

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